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アスリート インタビュー

フィンスイミング日本代表・松田志保さんインタビュー

theANkoが応援するアスリートの皆さんをご紹介するインタビューシリーズ。今回はフィンスイミング 日本代表で、現在13種目の日本記録を保持する、松田志保さんです。フィンスイミング 特有の「練習場所がない」悩みを抱え、少しでも競技を知ってもらおうとSNSで積極的に情報発信しています。チャーミングな容姿と歯切れの良い関西弁が人気の注目アスリートです。

松田志保(まつだ・しほ)公式サイト
1991年5月27日生まれ 兵庫県三田市出身 大阪体育大学体育学部健康スポーツマネジメント学科卒
■戦歴
<フィンスイミング>
2015年〜日本代表/2015年、2019年、日本選手権最優秀選手賞/日本選手権50m100mCMASビーフィン2冠5連覇中/100mサーフィス3連覇中/13種目の日本記録を保持
2015年アジア選手権50mビーフィン銅メダル獲得/2017年アジア選手権50m100mビーフィン銅メダル獲得、リレー含め5つのメダル獲得/2018年世界選手権50mビーフィン7位入賞、5種目で決勝進出
<競泳>
日本選手権出場/ジャパンオープン出場/ワールドカップ出場/マスターズ日本記録4種目保持

■世界選手権を終えて「自己嫌悪に溺れそう」

7月3日からロシア・トムスクで開催された世界選手権大会に出場していた松田さん。帰国して3日目の自主隔離期間中にお話を伺いました。

–2週間の隔離生活が始まったばかりですね

びっくりするくらい暇ですね。家の中なのでトレーニングもそれほどできないし。国際大会に行くと帰国日あたりに決まって風邪をひくのですが例外なく今回も体調を崩しました。

–ロシアは寒かったんですか

全然寒くなくて。むしろ乾燥して過ごしやすいところでしたので帰国して日本の湿度にウッとなりました。トムスクっていう内陸の都市で、時差も2時間くらいだったので気候的には問題なかったです。

–ロシアのコロナ体制はどのような感じでしたか

モスクワの方がひどくてお店が閉まっていたりするらしいですけど、トムスクはもう全然普通。みなさんノーマスクです。向こうの人たちの文化は挨拶でもハグしてちゅっちゅが当たり前じゃないですか(笑)そんな光景もたくさん見ました。

–やられましたか?(笑)

いや、必死で逃げました。大会役員の人すらマスクをしてないし、お客さんも多くはないんですが普通に入ってて、歓声も叫びまくっててすごかったです。そういう人たちから見ると、日本がオリンピックでなんで観客入れないんだって不思議なんでしょうね。

–今大会の成績はいかがでしたか

もう全然だめでしたね。タイムも遅いし、順位も求めていた順位には全然届かなくて、何しに行ったんやろっていう自己嫌悪に溺れそうなぐらい。

–そんな時にインタビューをお願いしてすみません(汗)思い当たる理由というのはありますか

出場を決めてから一か月しかないという調整不足とか、これまで国内のレースもほとんどなくてレース感を取り戻すのが難しかったとか。まあいろいろ問題があることをわかった上で行ってるので言い訳はしたくないんですが、自分ではそれなりの準備をしてきたつもりだったけどまだ足りなかったってことですね。世界レベルでは。

ワールドゲームズも来年に延期されましたが

出場のために8位に入る必要があったんですが、11位だったので出場もかないません。持ちタイムでは余裕があったんですが、今回は自己ベストにすらはるか及ばない結果になってしまったので。

–松田さんはフィンスイミングでほぼ満遍なく様々な部門の日本記録を持ってらっしゃる方ですが、日本のレベルは世界的にいうとどの辺なんですか。

ビーフィンとサーフィスとアプニアと3つ、全部日本ではまあそれなりのあれなんですけど(笑)世界に一番近いのがビーフィンで、もうちょっとでメダル争いできるんじゃないかというタイムは持っています。サーフィスとアプニアは決勝にも届かない感じですね。

【ここで簡単にフィンスイミング についてのご紹介フィンはビーフィン(片足ずつ履く2枚フィン)とモノフィン(両足そろえて履く1枚フィン)がある。ビーフィンは、クロールや背泳ぎなどと組み合わせると、推進力は30%アップするといわれる。イルカの足ひれのようなモノフィンの推進力はビーフィンに比べてはるかに大きく、50メートルを13秒台、競泳のクロールより、約1.5倍速いスピードを出すことができる。種目は以下の4つ。

■サーフィス(SF):シュノーケルを使用。身体の一部が水面から出ていなければならない。
■アプニア(AP):潜水競技。距離は25mか50mのみ。呼吸をしない。
■イマージョン(IM):スクーバ器材を使い水中を泳ぐ潜水競技。
■ビーフィン(BF):ビーフィンを使用してクロールを泳ぐ。

■フィンスイミング との出会い「何あれめっちゃ速い」

–松田さんご自身はどの種目が一番好きですか。

好き、好きか……。アプニアかなあ。でもアプニアが一番こわいので、好きっていうと違うのか、うーん難しいですね。全部好きなんですけど。アプニアはずっと潜ってるし、泳いでる時間も一番短いので、体感スピードが面白いですね。

–大学4年でフィンスイミングに転向されているんですよね?

転向ってみんな言うんですけど転向はしてないんです!競泳もやってますので。よく転向されたって言われるんですけど、転向したつもりはなくて、増やしたっていうつもりなので。

–そうなんですね、失礼しました。じゃあ、競泳もやりつつフィンスイミングを始められたのが大学4年。どういうきっかけでしたか。

谷川哲郎さんて有名なフィンスイマーがいらっしゃるんですけど(博士(学術/京都工芸繊維大学)、大阪国際大学人間科学部スポーツ行動学科講師。フィンスイミングの普及および競技・指導・研究活動を行う)、谷川さんが私の大学で競技をやりながら仕事をしていたので一緒に練習していたんです。聞いたらフィンスイミングの日本代表だと。谷川さんがたまにフィンをつけて泳いでいらしたんですが、大人になって初めて見る競技に衝撃を受けまして。ずっと小さい頃から水泳をやってきて、同じプールでやる競技なのに、なにあれすごいめっちゃ速いって。で、私もやりたい!と手を上げました。

–大学でそのまま練習を始められたんですか。

いえ違うんです。大学水泳をちゃんと最後までやりなさいって谷川さんに言われて。だからすぐにはやらせてくれなかった。大学水泳がちゃんと終わってインカレもワールドカップも終わって、全部終わったタイミングでもう一回やりたいと言いに行き谷川さんのチームに入会しました。大学ではフィンを泳いでいません。

■環境のこと「練習場所には困っています」

–フィンスイミングって自力では絶対出せないスピードが出るからすごく面白そうで、やれるならやってみたいくらいなんですけど、どこでやれるんだろうってハードルがありますよね

どこでもやれないから困ってるんですよね。チームでの体験会も練習も今全然できなくて。私は今は東京に出てきていますが、大阪の方でも全然できないそうです。みんな練習場所には困ってますね。

–それは環境的な問題ですか

そもそも(競技用ではない小さいものであっても)フィンを履いていいっていうプールが少ないことと、フィンを許可されたとしても専用コースを作るなどのハードルもなかなか高いっていうのがありますね。競争率もあるし、希望通りの時間と場所が取れないことも多くて。練習場所がないのはフィンスイマー共通の悩みです

–今は水に入る練習って週に何回くらいできるんですか。

2回ぐらい。3回入れたらよく頑張ったなって感じです。そのうちフィンを履けるのも1回か2回。

–スイミングスクールのインストラクターをされているそうですが、教える合間に練習したりはできないんですか。

泳いだりするんですけど、合間に泳ぐのは練習にならない。ちゃんと時間を取って自分のためにやらないと。今回、それが全然なかったんだなあって改めて思いました。コロナでプールの閉まる時間も早いし開いていないところも多かったし。本当に全然泳げなかったです。

■広報活動と女性アスリートへの性的いやがらせ問題「何回やられても慣れるものではない」

–マイナースポーツ競技のみなさんは、知ってもらいたい、広めたい、ゆくゆくはこの競技でご飯を食べていけるようにしたい、とむしろメジャースポーツの方たちよりアクティブで広報活動も熱心な方が多い印象を受けます。競技の将来性と共に自分のキャリアプランについて松田さんが今の時点で描いているものはありますか

フィンスイミングも、もっと広めたいとか知ってもらいたいとかゆくゆくはみたいなのはもちろんあるのは当たり前ですけど、それを現実にするのはなかなか難しい。私は「楽しいからやっている」くらいの感じで、結果そういうことに繋がればいいなと。

競泳を続けているのは競泳界の人たちとフィンを繋ぐきっかけにもなるという意図もあります。競泳のレース会場ではビーフィンで練習したりするんですが、そういうのもたぶん競泳の人たちが見たら新鮮だし知ってもらうきっかけにもなるのかなって。競泳とフィンのお互いが高め合った結果がそうなればいいなとは思ってますね。

–インスタやTwitterなどSNSの活動もまめにされているようですがそれも普及活動ですか?

まめにやってるつもりはないんですけど、向いてなくはないとは思うので(笑)アプリとかでキラキラさせてちゃんとすればそこそこになるかなって(笑)

–まさに健康美といった印象でとても素敵だと思います。これが正しいインスタの使い方ですよ。ただ、女性アスリートを性的な対象として画像を拡散させたりする行為が深刻な問題になっています。ためらうことはありませんでしたか。

SNSはフィンスイミングを知ってもらうきっかけになると思って始めました。「水着女子」って結構見られたりするので、この人がやってるフィンスイミングってなんなんやろって思ってもらえれば、っていう感じですね。

性的いやがらせはDMなどでめっちゃ来ます。私の水着の写真を知らない人の裸にコラージュされて送り付けてきたり。水着売ってくださいとかも日常的に来ます。

–個人的には「恥を知れ」と投げ飛ばしたい気持ちですが。。。ひどいことをする人がいるものですね。

こういうのは何回やられても慣れるものではなくて、今でもすごく嫌です。そんなことしかできない、かわいそうな人たちやなあと思っていますが。特に、一緒に映ってる子とか、後輩がそういうことをされてたりするのはめっちゃむかつきますね。巻き込まれてると申し訳ない気持ちです。こういうことは本当になくせるものならなくしたいです。

■theANkoについて「コロンビアの監督がめっちゃ興味もってきて

–では最後にあんこの話を。今回ロシアにtheANkoを持って行ってくださったそうですね

チームのみんなにも渡して、ってたくさん頂きまして1人5〜6個行き渡りました。みんな大絶賛でした。あんこ嫌いな人もおるんかなって思ってたんですけど、みんな大好きやったみたいでよかったです。

–海外遠征に行くときに日本食を持っていくことはありますか

和菓子的なもの、持ち運びやすいようかんとかは必ず持っていきますね。和菓子の甘さってやっぱりいいんですよね。他の選手も和菓子を持ってくる人は多いです。今回は「志保さんからあんこもらえるって聞いてたからようかん買わなかった」って人もいました(笑)。レース前後は、結構エネルギーが枯渇するんです。そういうときの糖質はあんこがいいですね。レースが終わった後はみんな飲んでました。

–お役に立てたようで嬉しいです。練習中はどうですか。

練習前後に飲むこともあります。筋トレの時とか。プールで泳いでる最中は口の中に残る気がするので飲まないです。公式には数回に分けてを推奨なんですか?あれ一気飲み、私できちゃうんですけど(笑)

–あんこを見た海外の方から何か反応はありましたか。

台湾の選手がパイナップルケーキをくれたのでお返しに差し上げました。日本のご飯が好きだそうで、theANkoもおいしいって言ってました。

あとコロンビアの監督がめっちゃ興味持ってきて。普段なら一口いる?って言ってるところですがあの形なので無理でした(笑)でもパッケージを凝視してました。

–えー、コロンビアですか!販路があるかなあ。

それは何だ、あなたはビーガンなのかって。いやビーガンじゃないけど、日本食で動物性のものを使っていないなんて当たり前すぎて私の英語力では説明ができなくてちょっと困りました。韓国の人にもビーガン?って聞かれましたね。

–そういう反応なんですね。今後は海外展開もしていけたらと思っているので参考になります。

来年はコロンビアで世界選手権がありますよ。

–ぜひ、その際はたくさん持って行って、件の監督にも「コレだよ!」ってプレゼントしてください(笑)

帰国間もなく、また思わぬ結果で気持ちが沈んでいたであろう状況にもかかわらず、快くインタビューに応じてくださった松田志保さん。実生活での様々な困難について正直な言葉で答えてくれましたが、インスタグラムではそんなそぶりも見せず輝くような笑顔を見せてくれています。ちなみに本文では彼女の雰囲気が伝わるようあえて関西弁を残しました!